こんにちは、牧野直子です。
今日は、お客様が、ワクワクするお店のデザインのお話です。
お店のアプローチ
みなさん、歌を例にあげます。イントロなく、いきなり歌から入ったらどう思いますか?
ちょっとびっくりしませんか?
もちろん、いきなりアカペラから入るような歌もありますが、それはそういう効果をねらったもの。ほとんどの歌には、イントロがありますよね。イントロで、その歌の雰囲気がわかって、その歌に入りやすくなる。
普通は、イントロがなく、いきなり歌が始まると違和感を感じますよね。
お店におけるイントロとは
これ、お店にも当てはまると思うんです。
都会のお店だと、敷地ラインから入口まであまり距離が取れないかもしれません。でも、できるだけアプローチの距離をとったほうが、スムーズにお店に入ることができます。
もし敷地ラインから距離が取れない場合は、お店の前に、かわいらしい植栽を置いたり、小型の看板や黒板を置いたりなど、ワンクッション置くことができますよね。
お店のアプローチは、想像以上に大事
あるレストランは螺旋階段を上って、2階にあったのですが、その螺旋階段に、食材やお酒の段ボールを置いたままにしてありました。確かに、店内が狭くて、店内に置く場所がないのかもしれませんが、これでは、楽しみにきていたお客様の心が幻滅ですよね。
お店のアプローチは、その世界に入る儀式がある
お店に入るアプローチで、落ち着いた老舗のようなお店では、階段を「上がる」暖簾を「くぐる」敷居を「またぐ」といったような、行動を知らないあいだにおこなっていることが多いんです。
その行動を行うたびに、お店までの距離が、ひとつひとつ近くなって、お店の世界へ入り込む「儀式」のようになっているんです。
見えない境界をひとつひとつ、中に入っているような感覚です。
お客様は意識しないうちに、お店の世界に、入っていくんですね。
茶室のデザインには意図がある
千利休がデザインした茶室には、茶室の客用の狭い入り口があります。躙り口(にじりぐち)といいます。
躙るというのは正座のまま少しづつ膝を前に進ませることです。
こぶしを床について体重を支えながら少しずつ進みます。
茶室の入り口は狭いので躙って茶室の中に入ることになります。
どうしてこんな狭い入口にしたかというと、それにも意図がありました。
それは、茶室の中は身分なんか関係なく、みんな平等だということ。
どんなに身分の高い人も茶室に入るときには、入り口で頭を下げ低い姿勢にならないと茶室の中に入れない。
もしも刀を持っている武士が、刀を差したままだと、引っかかって茶室の中に入れないですよね。自然と刀を置かないといけません。
こういった理由が入口にあります。
茶室とお店のアプローチの共通点
お店のアプローチも茶室も、くぐるという行為により、その中の世界観へいざなっています。
それが、ふたつの共通点でした。
お店のデザインもそんな意図をもって、作っていただければ嬉しいです。