飲食店内装に木を使いたいがオープンキッチンにしたい!難解な内装制限と排煙、防火区画、防煙区画について紐解きます

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こんにちは、牧野直子です。

飲食店設計で、疑問にあがる建築法規の2トップは、内装制限と防火防煙区画ですよね。

何が難しいというと、建築基準法の書き方が難解なのがそもそもなのですが、どういう用途の時にどんな仕上げがOKかということ。

デザイン的には、木材を使いたいけれども、それが可能なのか、という疑問が多いのかなと思います。

サイトを調べてみると、その法規について説明されているものはたくさんあるのですが、法規の説明がほとんどで、じゃあ、実際に設計するとき、どういう手順で考えていけばいいか、というのがわかりずらい。

なので今回は、実際にどう考えていくかをとらえていきたいと思います。

 

内装制限

まずは、内装制限とは。

「建築基準法 第35条の二 より

特殊建築物、階数が3以上の建築物、開口部を有しない建築物、

延べ1000㎡を超える建築物、調理室、火を使用する設備を設けたもの

を 壁、天井の仕上げを防火上支障がないようにする」

です。

例題として、1、2階が商業テナント、3~10階が共同住宅 というビルの2階に飲食店(約100㎡)を作る場合それが可能かどうか

を考えていきたいと思います。

STEP1 まず最初に、その建物全体が耐火建築物かどうかを調べる

参照:第128条の4 1項

 

例題の場合、3階以上の合計300㎡以上に居室があるが、YESになるので、

 

→ 天井 準不燃以上

1.2m以上の壁  難燃以上 が必要ということになります。 (※1)

 

ここで、★内装制限を受ける場所に木材を使える告示

H12 第1439号 というのがありますが、これには

 

難燃以上に準ずる組み合わせ

= 天井に準不燃 + 壁 木材  など (※2)

 

となるので、(※1)を満たすために、天井を準不燃材で作れば、壁全体に木材を使っても難燃材以上と見なされるということです。

つまり、天井を準不燃材以上(石膏ボードに塗装など)で仕上げれば、壁には木材を使っていいいよ、ということですね。客席は木材でOKです。

 

調理室の仕上げ

次に厨房です。厨房を別室で区切っている場合は、特に何も考えなくてよいのですが、オープンキッチンにしたい場合って増えていますよね。その場合、厨房と客席との仕切りはなるべく避けたいじゃないですか。

じゃあどうすればいいんでしょう?

(第128条の4 4項)より

調理室  天井、壁を 準不燃以上

調理室は、天井、壁を準不燃以上にしないといけません。オープンキッチンで、店舗全体を一体にしたいとなると、さきほどの例題では、調理室の規約のために、客席を木材にすることはできません。

しかし、昭和46年の住指発44号 (←基準法に載ってないからわかりずらい笑)で、

火元となる部分から「天井から火元の距離」の半分以上離れた場所で500mmの垂れ壁で区画をすることにより、厨房室以外の部分は内装制限の非対象(緩和対象)となる

ことが言われています。

つまり、オープンキッチンで店舗全体を木で仕上げたいとすれば、厨房の中のコンロから、一定距離をとった場所にH500以上の垂れ壁で区画すればよい

ということですね。

 

鉄板焼きなど、間近で調理を見せたい場合、そこにも、逃げ道はあり、コンロと周囲の壁に指定された離隔を確保できない場合、コンロ周りは9mm以上の不燃材で仕上げる。というのがあります。

防火防煙区画について

次に防火区画、防煙区画についてです。これは、排煙設備とも密接に関わっています。

例題)の建物になりますが、

床面積500㎡を超える特殊建築物、3階以上で500㎡を超える建築物には排煙設備が必要

なので、排煙設備が必要となります。

排煙設備とは、外気に面する開口、もしくは、機械排煙ですね。

しかしすべての部屋に、それらを設けるのは難しいと思います。そこで、排煙についても緩和規定があります。

 

例題)の店舗の場合、問題になったのが、客席の中で、個室として使う部屋と、従業員の小さいオフィスです。

よく、排煙計画では、「告示で逃げる」というフレーズを聞いたこともあるかと思いますが、これはどういうことかというと、そういった小部屋も告示にある構造や仕上げにすると、排煙設備を設けなくてもいいですよ、ということです。

飲食店での個室やオフィスは、人が長く居る場所だから「居室」になります。

だから、居室のことをうたった

 

告示1436-4-ニ(4) 居室の場合

・100㎡以下で区画

・仕上げと下地とも 不燃材料

・自然排煙部との区画に常時閉鎖のドア設置

 

にすれば、排煙設備は設置しなくてもよいということになります。

この常時閉鎖のドアは、ちゃんと扉がしまるものになるので、引き戸は開けた状態のままにできるので含まれません。引き戸の場合、煙感連動の閉鎖装置をつけなければいけないということになります。

これは、飲食店の個室のスペック的におかしいですよね。

これは告示を使って排煙設備を「逃げた」場合です。

もう一つの考え方としては、飲食店の個室を個室とみなさず、「大部屋と一体としてみなす」

という考え方があります。

 

個室を大部屋と一体と見なす場合

間仕切り壁の上部で天井面から50cm下方までの部分が開放されていること

 

つまり引き戸にする場合、上部に欄間 H=500空いていればよいということになります。

このような作りにすることで、個室にも木材を使えます、ということができるようになります。

例題の飲食店を使って、難解な内装制限と、排煙設備(防火防煙区画)について、まとめてきました。

ケースによって、読みとき方が変わってくるかと思いますが、考える手順など、参考になりましたら幸いです。

一級建築士。店舗やオフィスを主に設計しています。ワクワクする建築を作提案しています。お笑いとバレーボールが大好き。