こんにちは、牧野直子です。
建築士は、建築デザインを設計するのが仕事ですが、その建物や空間が、店舗である場合、その作り方は、デザインだけをデザインするのではいけないと私は思っています。
いかに、その商売の実績があがるか、それを建築側からサポートできるか、そこがとても重要なんですよね。
現在のお店で運営されているところを、見学したり、専門書を読みこんだりしています。しかし、実際に自分で体験している人には叶わない、というのが思うところ。そのためにレストランでバイトしたこともあります。まったく想像つかなかった世界が、少し自分のものになりましたね。
飲食店での機会ロス
私が働いていたのは25席の小さなレストランでしたが、だからこそ、何人組のお客様が、どんな順番でいらっしゃるか、そのお客様をどうやってお席に案内するか、そのチョイスしだいで、あっちに通しておけば両方お席に案内できたのに、、なんて悔しい思いを何度もしました。
2階にあったので、せっかくわざわざ階段をのぼってお店まで来てくれたのに、満席ですとお断りするのは心苦しいものです。しかもそれは、グループの中には空いている席があり、厳密には満席ではないのですからね。
お店の機会ロスをなくしたい、というのはとても重要なことだと思います。
客席レイアウト
あるい程度広いお店であれば、機会ロスは減らせるかもしれない。でも広いということは、それだけ広い分の金額に見合った分だけ売上げないといけない。
どちらも頭を使いますよね。
フロアの効率と快適性
この相反する課題をどう考えるか。これが重要なわけです。
一見、矛盾することを、実現させる。これが、売上を考える間取りの必須だと思います。
建築系の雑誌だと、どういう仕上げなのか、どういう間取りなのかは見ることができます。でも、本当にその客席数で成功だったのかどうか、本当はそこは使いにくいんじゃないか、とかそういう検証ができないんですよね。
そこで、「月刊食堂」という雑誌に、客席レイアウトの特集を見つけたので、購入して読んでみました。こういう視点は、建築雑誌にはないので、大変参考になります。
月刊食堂の間取り特集に載っていた客席レイアウトで、考えうるテーマは以下とのこと。
・ゾーニングや動線計画
・席数と客席稼働率の最大化
・キッチン作業と客席数の相関
・スタッフ・機器の合理的なポジショニング
・利用動機に応じた客席タイプの組み合わせ
・テーブルや椅子のベストな形状やサイズ
これを自店で考えていくことが、売上のあがる客席レイアウトを考える秘訣ですね。
これらを総合して考えると、
客席レイアウトを考えることは、お客様の満足度と店側の効率の妥協点を探ること
ということです。
事例の中でも、特に一般的に応用しやすそうなものを抜粋すると。
立飲み席でチャンスを逃さない
立飲み席のような、ある程度座席を自由にできる場所があると、機会ロスを減らせるとありました。満席の時に、満席です、と返してしまうのではなく、そこで軽く飲んでてもらう、ということですよね。そして、座席があいたら移動してもらう。少しでも、そこで軽く飲んでいてもらったら、自分のお店で続きを飲んでもらせます。
賑わっているように見せる配置
これも客席の配置により出来る演出です。
・入口近くを賑わっているように見えるカウンター席にする。
・鏡を使って人がたくさんいるような演出。
・ディスプレイを工夫して、空間に賑わい感を出す。
・活気や賑わいが損なわれず、お客様がぶつからないギリギリの通路幅(80cm程度)にする。
といったことがありました。
いかに機会ロスを減らしつつ、お客様が不快にならないところを下回らないか、それが大切ですね。そのあたりの判断が難しくていつも挑戦ではありますが、、笑。
参考になれば嬉しいです。